離婚時の親権は夫婦どちらかに渡すべきという明確な基準は特に定められていません。そのため、夫婦間で合意しているのであれば、父親側も問題なく親権を獲得できます。この他にも、父親が親権を獲得する際に理解しておきたいポイントがあります。

親権を獲得するにあたり、子どもの福祉は最優先で考えたい事項です。子どもが健やかな成長を遂げるためには、現状の安定した生活環境を維持することが求められます。離婚後に転居や転校の必要がなく、現在の住居と学校での生活を継続可能などのケースは、子どものこれまで育ってきた環境をなるべく変えずに済むと考えられます。また、兄弟や姉妹がいる場合、離れ離れにならないよう一緒に引き取れる環境を維持することも重要なポイントです。

子どもが15歳以上なら一般的に自我や価値観が確立しており、自分の意思を伝えられると考えられます。そのため、子ども自身の意見を尊重することが大切です。仮に審判・訴訟となった場合、家庭裁判所で意見聴取が行われ、子どもの意思を尊重したうえで親権者が決まります。また、10歳前後でもある程度自分の意思を伝えられると判断し、意向の確認を行うことがあります。

子どもを育てるためには「お金」と「時間」が必要です。子どもの福祉の観点から、これから子どもに寄り添った生活ができるか、経済的に養っていけるかなども大きく関係します。さらに、父親の健康状態も大きなポイントです。この健康には身体だけでなく、心の健康も含まれます。生活が破綻して子どもの福祉に影響を及ぼさないよう、自分自身の心身の健康状態にも気を配りましょう。

当事者同士が合意していれば父親でも親権は取れます。しかし、様々な事情から親権争いとなった場合、多くのケースで母親が親権を得ています。なぜ父親の親権獲得が困難とされるのでしょうか。

日本では、家族を養うために父親はフルタイムで仕事をし、子どもの面倒は母親が見るという社会的な構造が存在しています。そのため、母親のほうが子どもの養育に関して多くの実績を有しており、子どもの福祉を考慮すると母親と一緒に暮らすことが望ましいとなり、親権の獲得が優先されるのです。

上記のような家庭モデルの場合、子どもと父親が一緒に過ごす時間は少ないことが予想されます。子どもと父親のコミュニケーションの時間が少ない分、母親に対して愛着を持つ傾向が見られます。それにより、離婚時に子どもが母親を選択するケースも多く見られます。

基本的に子どもの親権は母親が優先される傾向です。しかし、夫婦のあり方や働き方が多様化する現代において育児に積極的な父親も増えており、親権を獲得するケースも少なくありません。弁護士による無料相談などを利用して親権に関する不安を解消し、納得のいく取り決めができるよう、冷静な話し合いを行うことをおすすめします。